この記事でわかること
- 暗号資産の価格が決まる基本的な仕組み
- 価格を上げる要因・下げる要因
- 株や為替との違い
- なぜ価格変動が激しいのか
暗号資産の価格はどうやって決まるのか

「ビットコインはなぜ今日は上がって昨日は下がったの?」と思ったことはありませんか。
暗号資産の価格は、株式や為替と同じく需要(買いたい人の量)と供給(売りたい人の量)のバランスによって決まります。買いたい人が多ければ価格は上がり、売りたい人が多ければ価格は下がります。
ただし株式とは異なり、暗号資産には「適正価格」の算出に使われる企業の業績や配当がありません。そのため価格は市場参加者の期待・心理・外部要因に大きく左右されるのが特徴です。
基本の仕組み|需要と供給

上の図のとおり、価格決定の中心にあるのは需要と供給のバランスです。
野菜の値段で考えるとわかりやすいです。台風で不作になると野菜の供給が減り、値段が上がります。反対に豊作で供給が増えれば値段は下がります。暗号資産も同じ原理で動いています。
ただし暗号資産には「収穫量」のような自然要因はありません。代わりに価格を動かす要因として、以下のようなものが挙げられます。
価格が上がる主な要因
半減期(Halving)による供給減少は最も構造的な要因です。Bitcoin(ビットコイン)は約4年ごとに新規発行量が半分になります。需要が変わらなくても供給が減れば、希少性が高まり価格は上昇しやすくなります。過去3回の半減期前後にはいずれも大きな価格上昇が見られました。
半減期が価格に与える影響

基本的な考え方:供給が減れば希少性が上がる
経済学の基本原理として、需要が変わらないまま供給が減れば価格は上がりやすくなります。半減期はまさにこの「供給の減少」を定期的に引き起こす仕組みです。
マイナーが受け取るブロック報酬が半分になるということは、新たに市場に流通するビットコインの量が半分になるということです。売りたいマイナーが減り、買い手が同じなら需給バランスが崩れて価格は上昇しやすくなります。
過去3回の半減期と価格の動き
| 半減期 | 報酬変化 | 半減期後1年の最高値(概算) |
|---|---|---|
| 2012年(第1回) | 50→25 BTC | 約100倍以上 |
| 2016年(第2回) | 25→12.5 BTC | 約30倍 |
| 2020年(第3回) | 12.5→6.25 BTC | 約8倍 |
過去3回はいずれも半減期の後、数ヶ月〜1年程度のタイムラグを経て大きな価格上昇が見られました。ただし上昇幅は回を重ねるごとに縮小しています。市場規模が大きくなるほど、同じ供給減少でも価格への影響が小さくなるからです。
タイムラグが生じる理由
半減期が起きると即座に価格が上がるわけではありません。理由は2つあります。
まず「織り込み済み」効果があります。半減期は日程が事前にわかっているため、市場参加者が事前に買いを入れる傾向があります。半減期の数ヶ月前から価格が上昇し始めることも多いです。
次に需給バランスの変化が市場に浸透するまで時間がかかる点があります。供給が減っても、既存の保有者が売り続ける間は価格上昇が抑えられます。売り圧力が薄れてきてはじめて価格が本格的に動き出します。
注意点:半減期=価格上昇の保証ではない
重要な点として、半減期後に必ず価格が上がるとは限りません。価格はマクロ経済・規制・市場センチメントなど多くの要因で動くため、半減期はあくまで「供給面からの後押し要因のひとつ」に過ぎません。過去のパターンを将来に当てはめることには慎重である必要があります。
機関投資家の参入も重要な要因です。2020年以降、テスラやマイクロストラテジーといった大企業が資産としてビットコインを購入し始めました。大口の買いは価格を大きく押し上げます。
機関投資家の参入が価格に与える影響
機関投資家とは何か
まず「機関投資家」とは、個人ではなく組織として大規模な投資を行う主体のことです。具体的には以下のような組織が含まれます。
| 種類 | 具体例 |
|---|---|
| 上場企業 | テスラ、マイクロストラテジー |
| ヘッジファンド | ポールソン&カンパニーなど |
| 年金基金 | 各国の公的年金 |
| 資産運用会社 | ブラックロック、フィデリティ |
| 銀行・証券会社 | JPモルガン、ゴールドマンサックス |
個人投資家が数万〜数百万円単位で動くのに対し、機関投資家は数十億〜数千億円単位で動きます。この規模の差が価格への影響力の差につながります。
価格への影響①|大口買いによる直接的な価格上昇
暗号資産市場はまだ規模が小さいため、大口の買いが入ると価格が大きく動きます。
2020〜2021年にかけてマイクロストラテジーが数千億円規模でビットコインを購入し続けたことで、市場に大きな買い圧力がかかりました。テスラが約1,500億円分のビットコインを購入したと発表した際も、価格は急騰しました。
価格への影響②|信頼性・正当性の向上
機関投資家の参入が価格に与える影響は、直接的な買いだけではありません。「大手金融機関が投資している」という事実そのものが、暗号資産への信頼性を高め、新たな投資家を呼び込む効果があります。
「怪しいもの」から「プロも使う資産クラス」へというイメージの変化が、中長期的な需要拡大につながります。
価格への影響③|ETF承認による資金流入
2024年1月、アメリカでビットコインの現物ETF(上場投資信託)が承認されました。これにより機関投資家が従来の証券口座からビットコインに間接的に投資できるようになり、大規模な資金流入が起きました。
ETF承認後数ヶ月でビットコインの価格は過去最高値を更新しており、機関投資家マネーの流入規模がいかに大きいかを示しています。
注意点|機関投資家は売りも大きい
機関投資家の参入はプラスだけではありません。売る際も大口になるため、機関投資家が一斉に売りに転じると価格の急落につながることがあります。また利益確定のタイミングや、ファンドの解約対応による強制売却なども市場を揺らす要因になります。
まとめると
機関投資家の参入が価格に与える影響は、大口買いによる直接的な価格押し上げ・信頼性向上による新規参入者の増加・ETFなどの制度整備による資金流入の3つに整理できます。ただし売りも大口になるため、価格変動を増幅させる両刃の要因でもあります。
規制の整備・ETF承認も価格上昇につながります。2024年にアメリカでビットコインのETF(上場投資信託)が承認されたことで、従来の金融市場からの資金流入が加速しました。制度的に認められることで信頼性が高まり、新たな買い需要が生まれます。
規制が暗号資産の価格に与える影響
規制が暗号資産の価格に与える影響
規制には「価格を上げる規制」と「価格を下げる規制」がある
規制と聞くと「締め付け=価格下落」と思いがちですが、実際には規制の内容によって価格への影響は真逆になります。
| 規制の種類 | 価格への影響 | 具体例 |
|---|---|---|
| ETF承認 | 上昇 | 2024年米国ビットコイン現物ETF |
| 取引所の制度整備 | 上昇 | 日本の資金決済法改正 |
| 課税ルールの明確化 | やや上昇 | 各国の暗号資産税制整備 |
| 取引・マイニング禁止 | 下落 | 中国の全面禁止令(2021年) |
| 規制強化の観測報道 | 下落 | SECの訴訟・調査報道 |
| 無規制状態の継続 | 不安定 | 規制の不確実性が続く場合 |
価格を押し上げる規制
制度的な承認・整備は価格上昇の強力な要因になります。
2024年1月のアメリカにおけるビットコイン現物ETFの承認は、その最たる例です。ブラックロックやフィデリティといった世界最大級の資産運用会社がETFを提供できるようになり、機関投資家マネーが大量に流入しました。承認後、ビットコインは過去最高値を更新しています。
規制が整備されると「怪しい資産」から「法律の枠組みの中で扱える資産」へとイメージが変わり、これまで参入をためらっていた機関投資家や個人が新たに買いに入る効果があります。
価格を押し下げる規制
禁止・制限令は強力な下落要因になります。
中国は2021年に暗号資産のマイニングと取引を全面的に禁止しました。当時、世界のビットコインマイニングの約50%を中国が担っていたため、この禁止令でマイナーが大量に売却を迫られ、価格は数ヶ月で約50%下落しました。
またアメリカのSEC(証券取引委員会)が取引所や特定のトークンに対して訴訟・調査を行うと報道されるだけで、市場が敏感に反応して価格が急落することもあります。
「規制の不確実性」自体が価格を不安定にする
規制が「ある」「ない」だけでなく、「どうなるかわからない」状態も価格変動を生む要因です。
各国が暗号資産をどう扱うかの方針が定まっていない間は、悪いニュースが出るたびに市場が過剰反応しやすくなります。逆に言えば、規制の枠組みが明確になるほど市場は安定しやすいとも言えます。
日本の規制と価格への影響
日本は比較的早い段階から暗号資産の制度整備を進めてきた国のひとつです。2017年の資金決済法改正で取引所登録制を導入し、2020年に正式名称を「暗号資産」に変更しました。
制度が整備されていることで日本の取引所は比較的安全とみなされていますが、一方で税制(雑所得・最大55%課税)の重さが国内市場の活性化を妨げているという指摘もあります。
まとめると
規制が価格に与える影響は一律ではなく、整備・承認系の規制は価格を押し上げ、禁止・制限系の規制は価格を押し下げるという構造になっています。また規制の不確実性そのものが価格の不安定要因になるため、各国の規制動向は暗号資産投資において常に注視すべき重要ファクターのひとつです。
メディア報道・著名人の発言も短期的に大きな影響を持ちます。イーロン・マスク氏のツイートひとつで価格が数十パーセント動いたこともあるほど、暗号資産市場は情報感応度が高いです。
メディア報道が暗号資産の価格に与える影響

なぜ暗号資産はメディアの影響を受けやすいのか
株式には企業業績・PER・配当といった「客観的な価値の基準」があります。しかし暗号資産にはそうした指標が存在しないため、市場参加者の期待と心理が価格を大きく左右します。報道や発言が心理を動かすと、それが直接価格に反映されやすいのです。
FOMO(フォモ)とFUD(ファド/エフユーディー)
メディアの影響を語るうえで欠かせない2つのキーワードがあります。
FOMO(Fear Of Missing Out)とは「乗り遅れへの恐怖」のことです。ポジティブな報道が続くと「自分だけ儲け損なうのでは」という心理が働き、深く考えずに買いに走る人が増えます。これが買いの連鎖を生み、価格を急騰させます。
FUD(Fear, Uncertainty, Doubt)とは「恐怖・不確実性・疑念」のことです。ネガティブな報道や噂が広まると投資家が一斉に売りに動き、価格が急落します。根拠が薄い情報でも、拡散速度が速い現代では大きな影響を持ちます。
具体的な事例
著名人の発言の影響は特に顕著です。イーロン・マスク氏が2021年にテスラのビットコイン決済受け入れをツイートすると価格は急騰し、その後「環境問題への懸念」から撤回すると急落しました。1人の発言で価格が数十パーセント動いた典型例です。
主要メディアの特集報道も大きな波を作ります。CNNやBBCなど世界的メディアが暗号資産を大きく取り上げると、これまで関心のなかった層が一気に流入します。2017年・2021年の価格急騰時にはいずれもメディアの大規模な報道が重なっていました。
SNSと口コミの影響も無視できません。Reddit・X(旧Twitter)での盛り上がりが価格を動かした事例は数多くあります。ミームコインのDogecoin(ドージコイン)はイーロン・マスク氏のツイートとSNSの口コミだけで価格が数百倍になった極端な例です。
報道と価格の「時間差」に注意
重要な点として、報道がピークになった頃には価格もピークに達していることが多いという傾向があります。
「テレビで暗号資産特集が組まれた」「友人から話を聞いた」というタイミングは、すでに価格が大きく上昇した後であることが少なくありません。メディアが騒いでいるときこそ、冷静に立ち止まる判断力が大切です。
まとめると
メディア報道・著名人の発言・SNSの口コミは、投資家心理(FOMOとFUD)を通じて暗号資産の価格を大きく動かします。客観的な適正価格の基準がない暗号資産は、特にこの影響を受けやすい市場です。情報に流されず、一次情報を確認する習慣が暗号資産を学ぶうえでとても重要です。
価格が下がる主な要因
ハッキング・詐欺事件は市場の信頼を大きく傷つけます。取引所のハッキングや大規模な詐欺が発覚すると、投資家が一斉に売りに走り価格が急落することがあります。
ハッキングが暗号資産の価格に与える影響

ハッキングが価格を下げる3つのメカニズム
① 直接的な売り圧力
ハッキングで大量の暗号資産が盗まれると、攻撃者はそれを換金しようと市場で売り始めます。大量の売りが一気に出ることで価格が下落します。
② パニック売り(FUD)
報道やSNSでハッキングの情報が拡散すると、被害を受けていない投資家も「もっと下がるかもしれない」という恐怖から売りに走ります。この連鎖的な売りがさらに価格を押し下げます。
③ 信頼・信用の棄損
取引所やプロトコルへの信頼が失われると、短期だけでなく中長期にわたって投資家が離れ、価格の回復が遅くなります。2014年のMt.Gox破綻はビットコイン価格が長期低迷する一因となりました。
取引所ハッキングとプロトコルハッキングの違い
影響の広がり方は対象によって異なります。
取引所ハッキングはその取引所のユーザーが直接被害を受けるため、信頼感へのダメージが大きく、市場全体の価格を押し下げる傾向があります。2018年のCoincheck事件では、NEM(ネム)が約580億円分盗まれ、日本市場全体が大きく動揺しました。
プロトコルハッキングはDeFi(分散型金融)のスマートコントラクトの脆弱性をつくもので、特定のトークンやプロジェクトへの影響が中心になりますが、DeFi全体への不信感につながることもあります。
価格はどのくらいで回復するのか
ハッキング後の回復速度は状況によって大きく異なります。市場全体が強気相場にある場合は数日〜数週間で回復することもあります。一方で市場が弱気のときや、被害規模が極めて大きい場合は回復に数ヶ月〜数年かかることもあります。
対応の透明性も重要で、運営側がすみやかに状況を説明し補償対応を行うと、信頼回復が早まりやすいです。
個人が取るべき対策
ハッキングリスクから身を守るために、以下の点が重要です。
取引所に置く資産は最小限にとどめ、長期保有分はハードウォレット(コールドウォレット)に移して自己管理するのが基本です。また取引所を選ぶ際は、セキュリティ体制・保険制度・過去のインシデント対応実績を確認することが大切です。
規制強化・禁止令も強力な下落要因です。中国が何度かビットコインのマイニングや取引を制限した際には、市場が大きく動揺しました。
規制強化が暗号資産の価格に与える影響

影響が大きい順に整理すると
最も価格への影響が大きいのは「全面禁止」系の規制です。
中国は2021年にビットコインのマイニングと取引を全面禁止しました。当時世界のマイニングシェアの約50%を占めていた中国のマイナーが一斉に売却を迫られ、価格は数ヶ月で約50%下落しました。ただしその後、マイニング拠点がアメリカやカザフスタンに移転し、価格は回復しました。一国の禁止令でもネットワーク自体は止まらないという暗号資産の特性が、回復につながりました。
次に影響が大きいのが「取引所・事業者への規制」です。
2023年にSEC(米証券取引委員会)がBinance(バイナンス)やCoinbase(コインベース)を提訴した際、市場は数日で10〜20%程度下落しました。ただし訴訟の結果が出るまで長引く場合、影響は断続的に続きます。
税制強化は即時の価格急落よりも中長期的な市場縮小につながります。
日本では暗号資産の利益が「雑所得」として最大55%課税される現行制度が、国内投資家の取引意欲を削いでいるという指摘があります。即座に価格が下がるというより、市場参加者が増えにくくなる構造的な問題です。
「悪い規制確定」より「不確実性」のほうが怖い場合も
興味深い点として、規制の内容が悪くても「確定」すると市場が安定することがあります。
「どうなるかわからない」状態は投資家にとって最もストレスが大きく、出来高が下がり価格も不安定になります。悪い規制でも内容が固まれば「それを前提に動ける」として市場が落ち着くことがあるのです。
まとめると
規制強化が価格に与える影響は、禁止令>取引所規制>税制強化>不確実性の順に即時性が高くなります。ただし暗号資産のネットワーク自体は止められないため、どの規制強化も中長期では市場が適応し回復する傾向があります。規制ニュースに過剰反応せず、全体の文脈を冷静に読むことが大切です。
大口保有者(クジラ)の売りも注意が必要です。クジラ(Whale)とは大量の暗号資産を保有する個人・団体のことです。クジラが大量に売却すると市場に売り圧力がかかり、価格が急落することがあります。
クジラ(Whale)とは
暗号資産の世界でクジラ(Whale)とは、特定の暗号資産を大量に保有する個人・団体・組織のことです。海のクジラが小さな魚を圧倒する存在であることから、市場を動かせるほどの巨大な保有者をこう呼びます。

クジラの具体例
代表的なクジラには以下のような存在があります。
サトシ・ナカモトはビットコイン誕生時の初期マイニングで約100万BTCを保有していると推定されており、史上最大のクジラとも言われます。これらのコインはほとんど動いていません。
マイクロストラテジーは企業として約20万BTC以上を保有する世界最大の企業クジラです。購入・売却のたびに市場が反応します。
各国政府も意外なクジラです。アメリカ政府は犯罪捜査で押収したビットコインを数万BTC保有しており、売却報道のたびに価格が動きます。
クジラの動きを見抜く方法
ブロックチェーンはすべての取引が公開されているため、大口アドレスの動きを追跡するツールが存在します。
Whale Alertというサービスはクジラの大口送金をリアルタイムで検知してXに投稿します。「1,000 BTC moved from unknown wallet to exchange」といった情報が流れると、「取引所に移した=売る準備か」と市場が敏感に反応することがあります。
注意点
クジラの動きは参考になりますが、意図を正確に読むことはできません。取引所への送金が必ずしも売却を意味するわけではなく、セキュリティ目的の移動の場合もあります。クジラの動きだけで売買判断をするのは危険です。
マクロ経済の悪化も影響します。世界的な株安や金利上昇局面では、投資家がリスクの高い資産を売って安全な資産に移す動きが起き、暗号資産も売られやすくなります。
マクロ経済が暗号資産の価格に与える影響

暗号資産は「リスク資産」として扱われる
マクロ経済の影響を理解するうえで最重要の前提があります。現在の市場では、暗号資産はリスク資産として分類されています。
リスク資産とは「景気が良いときに買われ、悪いときに売られる資産」のことです。株式・新興国通貨なども同じカテゴリーです。反対に「安全資産」は米国債・金(ゴールド)・円などで、景気悪化時に買われます。
つまりマクロ経済が悪化すると、投資家は暗号資産を売って安全資産に逃げる動きをとりやすく、価格が下落しやすくなります。
① 金利の影響|最も直接的なマクロ要因
金利は暗号資産価格に最も強い影響を与えるマクロ指標のひとつです。
金利が上昇すると、リスクを取らなくても預金や国債で利息が得られるため、投資家がリスク資産から安全資産に資金を移します。2022年にFRB(米連邦準備制度理事会)が急激な利上げを行った際、ビットコインは年間で約65%下落しました。
逆に金利が低下・据え置きになると、安全資産の魅力が薄れリスク資産への資金流入が起きやすくなります。2020年のコロナ禍でゼロ金利政策が続いた時期に、暗号資産は大きく上昇しました。
② 株式市場との連動|S&P500との相関
暗号資産、特にビットコインはアメリカの株価指数S&P500との連動性が高まっています。2020年以降、機関投資家が暗号資産市場に参入したことで、株式市場と同じ動きをしやすくなりました。
株式市場が急落するような局面(リーマンショック級の危機・コロナショックなど)では、暗号資産も連動して売られます。「分散投資の手段として暗号資産を持つ」戦略が、株安局面では機能しにくいことがあります。
③ ドル指数(DXY)との逆相関
ドル指数(DXY)とはドルの強さを示す指標で、暗号資産と逆の動きをしやすい関係があります。
ドルが強くなると、ドル建てで価格が決まるビットコインは相対的に割高になり売られやすくなります。逆にドルが弱くなると、ビットコインなど他の資産の相対的な価値が上がりやすくなります。
④ インフレ(CPI)との関係|複雑な影響
インフレと暗号資産の関係は一筋縄ではいきません。
「ビットコインはインフレヘッジになる」という主張があります。発行上限が固定されているため、インフレで法定通貨の価値が下がるほど相対的にビットコインの価値が上がるという理論です。
しかし実際には、高インフレ→中央銀行が金利を上げる→リスク資産売りというルートで価格が下落するケースも多く、単純にインフレ=ビットコイン上昇とはなりません。インフレヘッジとしての機能はまだ議論が続いています。
まとめると
| マクロ指標 | 暗号資産への影響 |
|---|---|
| 金利上昇 | 下落しやすい |
| 金利低下 | 上昇しやすい |
| 株価下落 | 連動して下落しやすい |
| ドル高 | 下落しやすい |
| ドル安 | 上昇しやすい |
| 高インフレ | 複雑(金利次第) |
マクロ経済は暗号資産価格を動かす大きな力のひとつです。ただしこれらはあくまで「傾向」であり、必ずそうなるわけではありません。暗号資産固有のニュース(半減期・規制・ハッキング)と組み合わせて総合的に判断することが大切です。
株・為替と何が違うのか

| 株式 | 為替(FX) | 暗号資産 | |
|---|---|---|---|
| 価格の根拠 | 企業業績・配当 | 国の経済・金利 | 需給・期待・希少性 |
| 取引時間 | 平日のみ | ほぼ24時間 | 24時間365日 |
| 価格変動 | 比較的安定 | やや安定 | 非常に大きい |
| 規制 | 強い | 強い | 整備途上 |
| 発行主体 | 企業 | 国家 | なし(分散型) |
株式には企業の業績という「価値の裏付け」があります。為替には国の経済力・金利という指標があります。一方、暗号資産にはこうした客観的な「適正価格」の基準がないため、市場参加者の期待と心理が価格に与える影響が特に大きくなります。
なぜ価格変動が激しいのか

暗号資産の価格変動が株や為替と比べて激しい理由は主に6つあります。
① 市場規模がまだ小さい

東京証券取引所の時価総額は約900兆円規模です。一方、暗号資産市場全体はその数分の一程度にとどまります。
市場規模が小さいということは、大口の売買が価格に与える影響が大きいということです。クジラが数百億円規模で売りに動くだけで、市場全体が数パーセント動くことがあります。株式市場では同じ金額を動かしても影響はほとんどありません。
② 24時間365日取引が続く

株式市場には「引け後」という調整時間があります。夜中に悪いニュースが出ても、翌朝の市場開始まで価格への反映が待たれます。
暗号資産市場は休みがありません。深夜に規制ニュースが出れば即座に価格が動き、週末にハッキングが発覚しても取引は止まりません。情報が即時に価格へ反映されるため、変動が急激になりやすいのです。
③ FOMO・FUDという心理的増幅

株式投資家の多くは企業のPER・配当・業績といった客観的な指標を参考にします。しかし暗号資産にはそうした「適正価格の基準」がないため、感情が売買を大きく左右します。
価格が上がり始めると「乗り遅れたくない(FOMO)」で買いが殺到してさらに上がり、下がり始めると「もっと下がるかも(FUD)」でパニック売りが連鎖してさらに下がります。心理的な増幅装置が常に働いています。
④ 規制の不確実性

各国の規制方針がまだ定まっていないため、政策ニュースひとつで市場が大きく揺れます。「○○国がビットコインを禁止検討」という報道だけで数十パーセント動いた例もあります。
株式市場でも規制リスクはありますが、成熟した法制度の中で動いているため、暗号資産ほど急激な反応は起きにくいです。
⑤ 流動性の低い銘柄が多い

ビットコインやイーサリアムなど主要銘柄は比較的流動性が高いですが、中小規模のアルトコインは流動性が極めて低いものが多いです。
流動性が低い市場では、少額の売買でも価格が大きく動きます。数千万円の売りで価格が半分になることも珍しくありません。
⑥ 情報の非対称性

プロジェクトの内部情報・大口投資家の動き・取引所の上場予定など、一般投資家が知る前に動く情報が存在します。情報を先に得た人が有利に動き、後から情報を知った人がその波に飲み込まれる構造が価格の急変動を生みます。
将来的には変動は小さくなるのか
市場規模の拡大・機関投資家の参入・規制整備が進むにつれて、変動幅は徐々に縮小していく可能性があります。実際にビットコインは2017年頃と比べると変動の性質が変わってきているという指摘もあります。ただし株式市場並みの安定には、まだ長い時間がかかると見られています。
まとめ
暗号資産の価格は、需要と供給のバランスによって決まります。半減期・機関投資家の参入・規制の整備などが価格を押し上げる要因となり、ハッキング・規制強化・マクロ経済の悪化などが押し下げる要因となります。
株や為替と異なり、客観的な「適正価格」の算出基準がないため、市場参加者の期待と心理が価格に大きく影響します。これが暗号資産の価格変動が激しい主な理由です。
暗号資産に関わる際は、この価格変動の大きさをしっかり理解したうえで、余裕資金の範囲で慎重に判断することが大切です。
あわせて読みたい





免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の暗号資産への投資を推奨するものではありません。暗号資産への投資にはリスクが伴います。投資判断はご自身の責任において行ってください。また、税務・法律に関するご相談は、専門家(税理士・弁護士)にお問い合わせください。本記事の情報は執筆時点のものであり、最新情報を保証するものではありません。

